退会者続出…。その時スクールの中で静かに起きていること。

スクールを運営していると、ふとこんなタイミングが訪れることがあります。

  • 何か特別なトラブルがあったわけではない
  • 指導内容に手を抜いているつもりもない
  • むしろ以前よりも丁寧に見ている

それなのに、退会が続く…。

自分の指導力が足りないのだろうか?

やる気がなくなってしまったのだろうか?

そう考えてしまう人も多いのではないでしょうか。

しかし、行動科学の視点から見ると、退会が続くとき、そこにはある共通した構造があることが多いです。

退会は「突然の判断」ではなく、かなり前から静かに進行している変化だからです。

目次

退会は突然の意思決定ではない

今月いっぱいで辞めます。

ある日突然起こったように感じるかもしれません。

しかし実際には、辞めるという選択は、その場で生まれているわけではありません。

人の行動は、

  • 今日1回が嫌だったから
  • 1回の練習が上手くいかなかったから

という理由だけで大きく切り替わることはほとんどありません。

これは何となく想像ができますよね?

  • 小さな違和感
  • 納得がいかない感覚
  • 居心地の悪さ

こうした経験を積み重ねるうちに、それまで続ける理由になっていた

  • 楽しさ
  • 成長の実感
  • 安心感

が、次第に弱くなっていきます。

つまり退会とは、「不満が爆発した結果」ではなく、続ける理由が不満を上回れなくなった結果なのです。

どういうことなのか、次で詳しく説明していきます。

退会が続くときに起こる「3つのズレ」

退会が続くとき、スクールの中では次のようなズレが起きていることが多くあります。

①コーチの手応えと選手の手応えのズレ

指導者としては

  • 内容は正しい
  • 将来につながる練習をしている
  • 長期的に見ればプラスが大きい

このように考えている一方で、参加している選手はどう感じているでしょうか。

  • 自分は今、何ができるようになっているのか
  • 前より何が良くなっているのか
  • 今日のレッスンで何を持ち帰ることができたのか

このようにコーチ側と選手側で感じている「トレーニングの手応え」にズレがあると、

不満があるわけじゃないけど、続ける意味ってなんだろう?

という感覚が残ります。

行動科学の視点では、行動を維持するのは「将来の正しさ」ではなく、その場で得られる主観的な手応えです。

悪くはないけど、継続する強い理由もない。

この状態は、退会につながりやすい典型です。

②できない時間が長く続いているように感じている

コーチの視点では、少しずつ成長していることを感じている。

それでも、

  • 本人がその成長を実感できていない
  • 周囲と比べて自分だけ停滞している感覚がある

こうした状態が続くと、子どもの中では「できていない時間」だけが長く続いているように感じられます。

結果として、

ここは合わなかった。

自分には向いていなかったのかもしれない。

という言葉に変換されていきます。

以前、習っていたサッカーを辞めて私のスクールに入った子が、

トレーニングを始めて3か月くらい経ったころこんなことを口にしていました。

僕に向いてるのはこっちだったんだ!

サッカーは向いていなかったんだと思う。

これはまさに前述したような状況ではないかと思います。

入会当初、身体能力は決して高い方ではありませんでしたが、

今日はこれができるようになってたね!

この前までできてなかったこれ、できるようになってるじゃん!

といった形で本人ができるようになったことに目を向けられるよう働きかけてきた成果かと思っています。

③スクール内での自分の立ち位置が見えなくなっている

もう一つ、見落とされがちなのが、スクール内での自分の立ち位置です。

  • 自分はどんな存在として見られているのか
  • ここで自分は必要とされているのか
  • 誰かと比べられるのか、個人として尊重されているのか

といった、この場で自分がどんな立場として関わっているかという認識のことを指します。

入会してすぐは、

  • 新しいことに挑戦する人
  • できるようになる途中の人
  • 応援される側の存在

といった役割が自然と与えられます。

しかし、ある程度時間が経つと

  • できることは増えたが、次に何を目指しているのかが曖昧
  • 上でも下でもない中間的な位置に固定される
  • ただ参加しているだけという感覚になる

このような状態が生まれやすくなります。

こうした状況が続くと、「継続する理由」が少しずつ弱くなっていきます。

「合わなかった」という言葉の正体

退会理由としてよく聞くものの1つに、「合わなかった」という言葉があります。

  • 内容が合わなかった
  • レベルが合わなかった
  • 指導方針が合わなかった

こんなことを想像するかもしれません。

しかし、実際のところは

続ける理由が本人の中で弱くなった

というケースがほとんどではないでしょうか?

そしてこれは、本人のモチベーションの問題ではなく、

指導者側がモチベーションを継続するための

  • 成長の実感
  • 居心地
  • 期待感
  • 役割

を指導者側が上手く与えられなかった結果だと私は考えています。

これこそが「合わなかった」の正体です。

退会が続くとき、考えてみたい視点

退会が続くと

  • 流行りのトレーニングを取り入れるべきか
  • 声かけを変えるべきか
  • 指導方法そのものを見直すべきか

など、迷いが生じることもあるかと思います。

そんな時、思い出してほしい視点があります。

「通い続ける」という行動がどんな結果と結びついているかという点です。

行動を繰り返すために必要なこと

応用行動分析(ABA)では、人が同じ行動を繰り返すかどうかは

  • 行動の直後に
  • どんな反応やフィードバックが
  • どの程度安定して帰ってくるか

によって左右されます。

これは以前、3日坊主を卒業するためにはどうすればいいかの記事でも触れましたね。

あわせて読みたい
いつも3日坊主…。行動が続かないのには理由があった! 現場でこんな経験はありませんか? 自主練するって言ったのに、もうやめてしまったみたいだな… セルフケアが大事って、何度言っても習慣にならないんだよな… やる気満々...

これは、「スクールに通い続ける」という行動でも例外ではありません。

ある行動を始める理由

動機づけ…「やるぞ!」「頑張るぞ!」の気持ち

ある行動を続ける理由

強化子…行動の直後に得られるうれしさ、納得感、成果、フィードバック

そこで、考えてみてほしいのです。

目の前の選手に対して、「うれしさや納得感、成果、フィードバック」を与えられているだろうか? と。

具体的には、

  • 入ったばかりの子でも「これならできそう」と思えるプログラムが最初の方に設定されているか
  • 初回~数回のトレーニングで、「ここまではできていたね」と言語化できる場面があるか
  • 失敗した直後に周囲の空気が重くならない設計になっているか

このような視点でレッスンを点検してみると糸口が見つかるかもしれません!

まとめ:退会は指導内容の否定ではない

退会が続くと、自分の指導を否定されたような気持になるかもしれません。

ちなみに私はめちゃくちゃ落ち込みます…。

しかし、退会という行為は指導者としての価値やスクールの存在意義を否定するものではありません。

焦ってトレーニングプログラムを変更する前に、

継続という選択をするための後押し(強化子)をトレーニングの中で十分に与えられただろうか?

ということを、一度振り返ってみてくださいね!

最後までお読みいただきありがとうございました。

スクール運営の参考になれば幸いです!

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