育成年代の指導では、スプリントスピード、パワー、持久力といった身体能力の向上にフォーカスがあてられることがあります。
実際、これらはトレーニングによって伸ばしやすく、成長も数値として確認しやすい要素です。
一方で、競技レベルが上がるにつれて、こんな場面に出会うことが増えてきます。

同じくらい足が速いのに、試合になるとなぜ差が出るのだろう?



フィジカル測定の結果は変わらないのに、プレーの質が違う気がする…。
この違いを説明する視点として、近年のスポーツ科学では、「反応の質」が注目されています。
今日はそんな「反応の質」について、競技への関わりとトレーニング方法を解説していきたいと思います。
「反応が速い」とは、何か。
スポーツ現場ではよく、「反応が速い選手」という表現が使われます。
この「反応」をスポーツの場面で考えるとき、次の2つの側面があります。
①Reaction Time(RT:反応時間)…合図に対して動き出すまでの速さ
RTとは、合図や刺激が出てから身体が動き始めるまでの時間を指します。
短距離のスタート時の反応や、合図に対する動き出しの速さとして、指導の現場でもなじみのある概念だと思います。
RTはトレーニングによって比較的改善がしやすく、育成年代では重要な要素です。
しかし、競技レベルが上がるにつれて、RTの差は小さくなりやすいことも知られています。
つまりRTは、
競技力の土台としては必要である一方、それだけで一流であるかどうかが決まるわけではない
という位置づけになります。
②Stop-Signal Reaction Time(SSRT:停止信号反応時間)…動き出したあとに止まれるか
実際の試合では、ただ速く動ければ良いわけではありません。
- 動き出しそうになったが我慢する
- 動き出したが、途中で止まる
- フェイントに反応しかけて踏みとどまる
こういった場面は、競技を問わず頻繁に見られます。



無理だったらやり直して!
というコーチングは、現場でも頻繁に聞こえてきます。
SSRT(停止信号反応時間)はまさに、止めるまでに要する時間を捉える指標です。
サッカー選手を対象にした研究では、単純な反応時間(RT)には差が出ない一方で、
SSRTは競技レベルの高い選手ほど短い
という傾向が示されています。
つまり競技力の差は、どれだけ速く動けるか よりも、出た反応をどれだけ速く止められるか
に現れやすい可能性があります。
「反応の質」はどう育てればいいのか
動き出したあとに止まる・やり直すといった能力は、抑制を必要とする状況に繰り返し適応させることで刺激することができます。
①動く/動かないを選ぶ場面をつくる
合図が出たら必ず動くのではなく、「この合図では動く」「この合図では動かない」といった選択が入ることで、
選手は「抑えながら反応する」ことが求められます。
つまり、反応の速さそのものではなく、「いつでも止められる状態を保ったまま動く力」が問われるようになります。
例)手が上がったら走り出す、笛が鳴っても走り出さない
②動き出したあとに判断が入る状況を作る
動き出したあとに、
止まる・切返す・やり直す
といった判断が入ることで、出る速さだけでなく止める力が求められ、途中で止める可能性を常に抱えたまま動くことになります。
これにより「動きながら判断を上書きできるか」という制御能力が問われるようになります。
例)コーチがその場に立っている場合は止まる、手を上げたら切返す、1歩前に出たらやり直す
③勝ち負けだけで評価しない
勝敗で評価すると、選手は「とにかく先に出る」「速く動く」ことが正しいと学習しやすくなります。
「抑える力」を育てたい場合には、課題に正しく反応できていたかどうかで評価する方が、判断を伴った反応を引き出しやすくなります。
勝敗ではなく「判断が入ったうえで適切に反応できていたか」に評価軸を置くことが重要です。
例)速くゴールできても、ミスがあれば失格
まとめ:一流との差は「反応の質」だった
一流選手とそれ以外を分けるのは、単にどれだけ速く動けるかではありません。
今回解説してきたとおり、合図に対して動き出す速さ(RT)は競技力の土台としては重要ですが、
一定レベルを超えると差がなくなっていきます。
一方で
- 出した反応を抑え、切り替えることができるか(SSRT)
という反応を制御する力には、競技レベル差が表れやすいことが示されています。
このような視点で反応を磨いていくことが、育成年代の指導では欠かせない視点の一つになります!
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[…] 一流選手とそれ以外の選手の差は何か―育成年代で育てたい「反応の質」 […]